『子どもに誇りを持って語れる仕事』 ― スタッフの言葉が企業理念を変えた

『子どもに誇りを持って語れる仕事』 ― スタッフの言葉が企業理念を変えた | そらのしたテントクリーニング
ブログ|2026.04.29

親子で夕食の時、子どもが聞いてきました。

「パパはどんな仕事をしているの?」

その瞬間、答えがすぐに出てきていますか?

多くの親は、その質問に対して、誇りを持って答えたいと思っています。でも、実際には、「まあ、色々やってるんだよ」と濁してしまう。家では、仕事の話をしない。むしろ、仕事のストレスを子どもにぶつけてしまう。

企業経営者にとっても同じです。スタッフに「この会社で働いている意味は何ですか?」と聞かれた時に、自信を持って答えられていますか?

そらのした代表・室野は、4年間「完璧だ」と信じていた企業理念を、この話を聞いて変えることを決心しました。

それが、「家で誇りを持って語れる仕事をする」という気づきでした。

この記事では、経営者一人の思いから、組織全体で紡ぎ出す理念へと進化した、その対話のプロセスをお話しします。


企業理念を「完璧に作ろう」とした時代

そらのした代表・室野は、会社員時代、尊敬できる先輩と出会いました。

その先輩は、つまらないと思っていた環境を、本気で取り組むことで、楽しい時間に変えていった。その経験から、「本気のお題を持った仲間で、一緒に創造的な仕事をする。その時間を増やしたい」という思いが生まれたのです。

2019年、その思いを企業理念として言語化しました。

「遊び心あふれる仲間づくり」

その理念は、社内の文化作り、スタッフのモチベーション、働き方改革を中心に据えていました。内向きで、組織内部の価値観を大事にしたものです。

「いい仲間を集めよう」「楽しい職場を作ろう」「人生を楽しむかっこいい大人を増やそう」

4年間、その理念で経営してきました。その間、スタッフにも説明し、顧客にも伝えた。室野は、一貫性を保つことが経営の基本だと信じていたからです。

「完璧な企業理念は、揺らがない」

その確信の下、経営は進んでいました。

理念は「完璧」であるべき、という思い込み

経営者の多くは、企業理念を一度決めたら、それは変えてはいけないものだと考えます。

「経営がぶれてる」「創業の志を忘れてる」そう思われることを恐れるのです。

室野もそうでした。理念を作った時点で、それはもう揺らがないものだと思った。社員にも顧客にも、その一貫性を示すことが信頼につながると信じていたのです。


海外展開で気づいた『内向きの限界』

転機は、予期しない場所から訪れました。

2023年、ドイツのミュンヘンで開催される「ISPO2023」という国際展示会に、室野は出展することになったのです。

地方の小さな会社が、いきなり海外に出ていく。

その舞台で、当たり前のように問われる質問がありました。

「あなたの会社は何をするのか」
「世の中に対してどんな価値を提供するのか」

そこで、「遊び心あふれる仲間づくり」と答えても、海外の人たちには理解されない。

むしろ、戸惑いの表情が返ってくる。

なぜなら、それは 内向きの理念だから です。自分たちのチーム文化の話であって、世の中への価値提案ではないからなのです。

その時、室野は気づきました。

「僕たちは、まだ世の中に目を向けていなかった」

いくら組織内部を整えても、社会への視点がなければ、グローバルには通用しない。その現実を突きつけられたのです。


スタッフからの率直な声 ― 痛みを伴う気づき

帰国後、室野は決断しました。

新しいミッション・ビジョンを作る。ただし、一人では決めない。スタッフと何度も、何日も対話を重ねると決めたのです。

なぜなら、経営者一人の思いだけでは、現場のスタッフは動かないから。それを、長年の経営経験から学んでいたからです。

その対話の中で、ある声が挙がりました。

「以前の会社時代、家で楽しそうに会社の話をしていたのに、今はしなくなった」

別のスタッフからは、こんな言葉も聞こえてきました。

「子どもに『パパはどんな仕事をしているの?』と聞かれても、あまり話したくない」

「仕事のイライラを家庭に引きずってしまって、子どもに当たってしまったことがある」

その言葉を聞いた時、室野の心は痛みました。

なぜなら、それは 仕事に対しての誇りと喜びが失われているということ だから。

自分たちが掲げている「遊び心あふれる仲間づくり」という理念が、実は形だけになってしまっていたんです。

組織内部では「楽しい職場」を標榜していたのに、スタッフの家庭では、その仕事が「語るに値しない」と感じられていた。その矛盾に、室野は気づかされたのです。

「語れる仕事」への転換

その痛みから、新しい「バリュー」が生まれました。

「語れる仕事をしよう」

つまり、家に帰った時に、子どもたちに誇りを持って語れるような仕事をしよう。感謝される社会貢献をしよう。

その仕事から生まれたいいエネルギーを、家庭でも発信しよう。

もう一つのバリューは、こちらはより個人的な想いが詰まっています。

「山屋に認められる会社になる」

室野は登山をする人が、本当にかっこいいと思っていた。憧れを抱いていた。だから、そういう人たちに認められる会社になりたい。憧れの人に近づきたい、認められたいという思いから生まれた言葉だったのです。


理念の進化 ― 全ての事業に集約されていた価値観

スタッフとの議論を通じて、室野が提供している製品やサービスの本質を改めて見つめ直しました。

アウトドア専門レンタル、アウトドア専門クリーニング、クリーニング済みアウトドア用品中古販売。

一見すると、バラバラな事業に見えるかもしれません。

でも、その奥底に流れているのは、一つの価値観です。

「捨てられるはずだった道具を、生き返らせる」
「モノを活かす」
「モノを使い切る」

そう、そこなんです。

モノを大事にする文化。長く愛用する。最後まで価値を引き出す。

実は、世界が直面している問題の一つが、「サスティナビリティ」です。

ファッション産業は、年間92万トンのテキスタイルウェストを生み出す。そのほとんどが埋立地に送られるか、焼却される。

小さく、地方で営んでいるアウトドア用品のメンテナンス事業は、その大きな流れに逆行するもの。

そして、スタッフとの対話を通じて室野が気づいたのは、そらのしたのすべてのサービスが、まさにこのミッションに集約されていた ということだったのです。

新しい理念の誕生

2025年、室野は企業理念を変えました。

「モノを『使い切る』文化を創る」

ビジョン:「日本を代表するサステナブルなモデル企業になる」

この理念なら、世界に説得力を持って伝えられる。

グローバルなリーディングカンパニーを目指す時に、本当に追い求めるべき「お題」なんだ。

そう確信した時、室野は企業理念を変える決断ができたのです。


内向きから外向きへ。そして、本当の意味での「仲間づくり」へ

正直に言うと、この転換は、立ち位置を大きく変えました。

「遊び心あふれる仲間づくり」は、良い理念でした。

でも、それは言ってみれば、内向きの世界観 です。自分たちのチーム、自分たちの会社内での文化作りに焦点が当たっていた。

一方、「モノを使い切る文化を創る」は、外向きの世界観 です。社会課題に向き合い、世の中を変えていく。そういう視点なのです。

ただし、大事な認識の転換があります。

本当に大事にしたいのは、仲間づくりではなく、その仲間づくりを通じて、社会課題を解決すること。

つまり、「語れる仕事をしよう」というバリューを大事にしながら、社会的価値創造に取り組む。

それこそが、本当の意味での「かっこいい大人」であり、「遊び心あふれる仲間づくり」なんだと気づいたのです。

その本質に気づくのに、室野は15年以上かかった。海外展開がなければ、多分、ずっと気づかなかったと思います。


経営者へのメッセージ ― 理念は『紡ぎ出す』もの

企業理念を変えることに、罪悪感を感じる経営者は多いと思います。

「経営がぶれている」と思われないか。「創業の志を忘れている」と批判されないか。そうした恐怖心です。

でも、本当はそうではありません。

企業理念を完璧に作ろうとしなくていい。 むしろ、最初なんて、ぼんやりしてていいんです。

大事なのは、経営する中で、スタッフの声を聞き、お題を見つけ、成長していく柔軟性。

そして、その成長に応じて、理念を進化させていく勇気です。

何よりも大事なのは、スタッフとの対話を通じて、理念を一緒に作り上げること。

経営者一人の思いではなく、組織全体で共有できる理念を。

「仲間づくり」という内向きの視点から、「社会的価値創造」という外向きの視点へ。

でも、その過程で、「語れる仕事をしよう」という、スタッフの心の声を大事にしながら。

その転換ができたとき、初めて会社は本当の意味でのリーダーになります。

グローバルな視野も生まれます。

理念を変えるなんて、ぶれてるんじゃないか、と心配する必要はない。

むしろ、お題を見つけて、進化できない経営、スタッフの声を聞かない経営の方が、よっぽど危ない。


まとめ ― スタッフとの対話から生まれた経営

子どもに「パパはどんな仕事をしているの?」と聞かれて、誇りを持って答えられるか。

それは、単なる個人の問題ではありません。

それは、会社全体の心理状態を示すバロメーターです。

スタッフが家で、その仕事について語ることができるか。子どもに説明できるか。そこに、組織の本当の価値がいかに浸透しているかが表れるのです。

海外展開と、スタッフとの対話を通じて、室野は初めて本当の「お題」に気づくことができました。

「モノを使い切る文化を創る」

「語れる仕事をしよう」

「山屋に認められる会社になる」

この3つの言葉が、今のそらのしたの全てです。

日本を代表するサステナブルなモデル企業になるために。

企業理念は、生きているものなんです。

固定的ではなく、柔軟に進化していく。

そして、何よりも大事なのは、スタッフとの対話の中で紡ぎ出されるもの。

それこそが、本当の経営だと思う。


スタッフと一緒に、「語れる仕事」を創ろう

もし、あなたが経営者やリーダーで、スタッフの心の声を聞く機会を失っているなら、ぜひこれを機に対話を始めてみてください。

「この会社で働くことで、あなたは何を感じていますか?」

「家で、この仕事について、家族に語っていますか?」

その問いかけの中から、新しい理念、新しい価値観が生まれるかもしれません。

室野とそらのしたも、スタッフとの対話の中で、新しい企業理念「モノを使い切る文化を創る」を紡ぎ出しました。

スタッフの声を大事にしながら、社会的価値創造に取り組む企業を目指しています。

そんな「語れる仕事」に、一緒に取り組む仲間をそらのしたでは募集しています。


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